異字同訓
このコンテンツは、間違いやすい「異字同訓」の使い分けの用例を示したものです。
※文化庁の『「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)』を参考にしています。
たえる(耐堪)
- 【堪える】その能力や価値がある。その感情を抑える。
- 任に堪える。批判に堪える学説。鑑賞に堪えない。見るに堪えない作品。憂慮に堪えない。遺憾に堪えない。
- 【耐える】苦しいことや外部の圧力などをこらえる。
- 重圧に耐える。苦痛に耐える。猛暑に耐える。風雪に耐える。困苦欠乏に耐える。
たずねる(尋訪)
- 【尋ねる】問う。捜し求める。調べる。
- 道を尋ねる。研究者に尋ねる。失踪した友人を尋ねる。尋ね人。由来を尋ねる。
- 【訪ねる】おとずれる。
- 知人を訪ねる。史跡を訪ねる。古都を訪ねる旅。教え子が訪ねてくる。
たたかう(戦闘)
- 【戦う】武力や知力などを使って争う。勝ち負けや優劣を競う。
- 敵と戦う。選挙で戦う。優勝を懸けて戦う。意見を戦わせる。
- 【闘う】困難や障害などに打ち勝とうとする。闘争する。
- 病気と闘う。貧苦と闘う。寒さと闘う。自分との闘い。労使の闘い。
たっとい・とうとい(尊貴)
- 【尊い】尊厳があり敬うべきである。
- 尊い神。尊い犠牲を払う。
- 【貴い】貴重である。
- 貴い資料。貴い体験。
たっとぶ・とうとぶ(尊貴)
- 【尊ぶ】尊厳があり敬うべきである。
- 神仏を尊ぶ。祖先を尊ぶ。
- 【貴ぶ】貴重である。
- 和をもって貴しとなす。時間を貴ぶ。
たつ(断絶裁)
- 【断つ】つながっていたものを切り離す。やめる。
- 退路を断つ。国交を断(絶)つ*。関係を断(絶)つ*。快刀乱麻を断つ。酒を断つ。
- 【絶つ】続くはずのものを途中で切る。途絶える。
- 縁を絶つ。命を絶つ。消息を絶つ。最後の望みが絶たれる。交通事故が後を絶たない。
- 【裁つ】布や紙をある寸法に合わせて切る。
- 生地を裁つ。着物を裁つ。紙を裁つ。裁ちばさみ。
- *「国交をたつ」や「関係をたつ」の「たつ」については、「つながっていたものを切り離す」意で「断」を当てるが、「続くはずのものを途中で切る」という視点から捉えて、「絶」を当てることもできる。
たつ(立建)
- 【建つ】建物や国などを造る。
- 家が建つ。
- 【立つ】直立する。ある状況や立場に身を置く。離れる。成立する。
- 演壇に立つ。鳥肌が立つ。優位に立つ。岐路に立つ。使者に立つ。席を立つ。見通しが立つ。評判が立つ。
たてる(立建)
- 【建てる】建物や国などを造る。
- ビルを建てる。銅像を建てる。一戸建ての家。国を建てる。都を建てる。
- 【立てる】直立する。ある状況や立場に身を置く。離れる。成立する。
- 計画を立てる。手柄を立てる。相手の顔を立てる。
たま(玉球弾)
- 【弾】弾丸。
- 拳銃の弾。大砲に弾を込める。流れ弾に当たって大けがをする。
- 【玉】宝石。円形や球体のもの。
- 玉を磨く。玉にきず。運動会の玉入れ。シャボン玉。玉砂利。善玉悪玉。
- 【球】球技に使うボール。電球。
- 速い球を投げる。決め球を持っている。ピンポン球。電気の球。
つかう(使遣)
- 【使う】人や物などを用いる。
- 通勤に車を使う。電力を使う。機械を使って仕事をする。予算を使う。道具を使う。人間関係に神経を使う。頭を使う。人使いが荒い。大金を使う。体力を使う仕事。
- 【遣う】十分に働かせる。
- 心を遣(使)う*。気を遣(使)う*。安否を気遣う。息遣いが荒い。心遣い。言葉遣い。仮名遣い。筆遣い。人形遣い。上目遣い。無駄遣い。金遣い。小遣い銭。
- *現在の表記実態としては、「使う」が広く用いられる関係で、「遣う」を動詞の形で用いることは少なく、「○○遣い」と名詞の形で用いることがほとんどである。特に、心の働き、技や金銭などに関わる「○○づかい」の場合に「遣」を当てることが多い。
つく(付着就)
- 【付く】付着する。加わる。意識などを働かせる。
- 墨が顔に付く。足跡が付く。利息が付く。味方に付く。目に付く。
- 【就く】仕事や役職、ある状況などに身を置く。
- 職に就く。床に就く。緒に就く。帰路に就く。眠りに就く。
- 【着く】達する。ある場所を占める。着る。
- 手紙が着く。東京に着く。席に着く。
つくる(作造創)
- 【作る】こしらえる。
- 米を作る。規則を作る。新記録を作る。計画を作る。詩を作る。笑顔を作る。会社を作る。機会を作る。組織を作る。
- 【創る*】独創性のあるものを生み出す。
- 新しい文化を創(作)る。画期的な商品を創(作)り出す。
- 【造る】大きなものをこしらえる。醸造する。
- 船を造る。庭園を造る。宅地を造る。道路を造る。数寄屋造りの家。酒を造る。
- *一般的には「創る」の代わりに「作る」と表記しても差し支えないが、事柄の「独創性」を明確に示したい場合には、「創る」を用いる。
つぐ(次継接)
- 【接ぐ】つなぎ合わせる。
- 骨を接ぐ。新しいパイプを接ぐ。接ぎ木。
- 【次ぐ】すぐ後に続く。
- 事件が相次ぐ。首相に次ぐ実力者。富士山に次いで高い山。次の日。
- 【継ぐ】後を受けて続ける。足す。
- 跡を継ぐ。引き継ぐ。布を継ぐ。言葉を継ぐ。継ぎ目。継ぎを当てる。
つける(付着就)
- 【付ける】付着する。加わる。意識などを働かせる。
- 知識を身に付(着)ける*。名前を付ける。条件を付ける。付け加える。気を付ける。
- 【就ける】仕事や役職、ある状況などに身を置く。
- 役に就ける。
- 【着ける】達する。ある場所を占める。着る。
- 船を岸に着ける。車を正面玄関に着ける。衣服を身に着ける。
- *「知識を身につける」の「つける」は、「付着する」意で「付」を当てるが、「知識」を「着る」という比喩的な視点から捉えて、「着」を当てることもできる。
つつしむ(慎謹)
- 【慎む】控え目にする。
- 身を慎む。酒を慎む。言葉を慎む。
- 【謹む】かしこまる。
- 謹んで承る。謹んで祝意を表する。
つとまる(勤務)
- 【務まる】役目や任務を果たす。
- 彼には主役は務まらない。会長が務まるかどうか不安だ。
- 【勤まる】給料をもらって仕事をする。仏事を行う。
- この会社は私には勤まらない。
つとめる(勤務努)
- 【努める】力を尽くす。努力する。
- 完成に努める。解決に努める。努めて早起きする。
- 【務める】役目や任務を果たす。
- 議長を務める。親の務めを果たす。
- 【勤める】給料をもらって仕事をする。仏事を行う。
- 銀行に勤める。永年勤め上げた人。勤め人。本堂でお勤めをする。法事を勤める。
とかす(解溶)
- 【溶かす】液状にする。固形物などを液体に入れて混ぜる。一体となる。
- 鉄を溶かす。絵の具を溶かす。
- 【解かす】固まっていたものが緩む。答えを出す。元の状態に戻る。
- 相手の警戒心を解かす。
とく(解溶)
- 【溶く】液状にする。固形物などを液体に入れて混ぜる。一体となる。
- 小麦粉を水で溶く。
- 【解く】固まっていたものが緩む。答えを出す。元の状態に戻る。
- 結び目を解く。包囲を解く。会長の任を解く。
とける(解溶)
- 【溶ける】液状にする。固形物などを液体に入れて混ぜる。一体となる。
- 雪や氷が溶(解)ける*。チョコレートが溶ける。砂糖が水に溶ける。地域社会に溶け込む。
- 【解ける】固まっていたものが緩む。答えを出す。元の状態に戻る。
- 雪解け*。問題が解ける。緊張が解ける。誤解が解ける。
- *「雪や氷がとける」の「とける」については、「雪や氷が液状になる」意で「溶」を当てるが、「固まっていた雪や氷が緩む」と捉えて「解」を当てることもできる。「雪解け」はこのような捉え方で「解」を用いるものである。
ととのう(整調)
- 【整う】乱れがない状態になる。
- 体制が整う。整った文章。
- 【調う】必要なものがそろう。望ましい状態にする。
- 家財道具が調う。
ととのえる(整調)
- 【整える】乱れがない状態になる。
- 隊列を整える。身辺を整える。呼吸を整える。
- 【調える】必要なものがそろう。望ましい状態にする。
- 旅行の支度を調える。費用を調える。味を調える。
とぶ(飛跳)
- 【跳ぶ】地面を蹴って高く上がる。
- 溝を跳ぶ。三段跳び。跳び上がって喜ぶ。跳びはねる*。うれしくて跳び回る。縄跳びをする。跳び箱。
- 【飛ぶ】空中を移動する。速く移動する。広まる。順序どおりでなく先に進む。
- 鳥が空を飛ぶ。海に飛び込む。アメリカに飛ぶ。家を飛び出す。デマが飛ぶ。うわさが飛ぶ。途中を飛ばして読む。飛び級。飛び石。
- *「跳」は、常用漢字表に「とぶ」と「はねる」の二つの訓が採られているので、「跳び跳ねる」と表記することができるが、読みやすさを考えて「跳びはねる」と表記することが多い。
とまる(止留泊)
- 【止まる】動きがなくなる。
- 交通が止まる。水道が止まる。小鳥が木の枝に止(留)まる*。笑いが止まらない。止まり木。
- 【泊まる】宿泊する。停泊する。
- 宿直室に泊まる。船が港に泊まる。
- 【留まる】固定される。感覚に残る。とどめる。
- 目に留まる。
- *「小鳥が木の枝にとまる」の「とまる」については、小鳥が飛ぶのをやめて「木の枝に静止する(動きがなくなる)」意で「止」を当てるが、「木の枝にとどまっている(固定される)」という視点から捉えて、「留」を当てることもできる。
とめる(止留泊)
- 【止める】動きがなくなる。
- 息を止める。車を止める。通行止め。
- 【泊める】宿泊する。停泊する。
- 友達を家に泊める。
- 【留める】固定される。感覚に残る。とどめる。
- ピンで留める。ボタンを留める。心に留める。留め置く。局留めで送る。
とらえる(捕捉)
- 【捉える】的確につかむ。
- 文章の要点を捉える。問題の捉え方が難しい。真相を捉える。聴衆の心を捉える。
- 【捕らえる】取り押さえる。
- 逃げようとする犯人を捕らえる。獲物の捕らえ方。密漁船を捕らえる。
とる(取採執捕撮)
- 【取る】手で持つ。手に入れる。書き記す。つながる。除く。
- 本を手に取る。魚を取(捕)る*。資格を取る。新聞を取る。政権を取る。年を取る。メモを取る。連絡を取る。着物の汚れを取る。疲れを取る。痛みを取る。
- 【執る】手に持って使う。役目として事に当たる。
- 筆を執る。事務を執る。指揮を執る。政務を執る。式を執り行う。
- 【捕る】つかまえる。
- ねずみを捕る。鯨を捕る。外野フライを捕る。生け捕る。捕り物。
- 【採る】採取する。採用する。採決する。
- 血を採る。きのこを採る。指紋を採る。新入社員を採る。こちらの案を採る。会議で決を採る。
- 【撮る】撮影する。
- 写真を撮る。映画を撮る。ビデオカメラで撮る。
- *「魚をとる」の「とる」は「手に入れる」という意で「取」を当てるが、「つかまえる」という視点から捉えて、「捕」を当てることもできる。