異字同訓
このコンテンツは、間違いやすい「異字同訓」の使い分けの用例を示したものです。
※文化庁の『「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)』を参考にしています。
かえす(返帰)
- 【帰す】自分の家や元の場所に戻る。
- 親元へ帰す。
- 【返す】元の持ち主や元の状態などに戻る。向きを逆にする。重ねて行う。
- 持ち主に返す。借金を返す。恩返し。手のひらを返す。言葉を返す。読み返す。思い返す。
かえりみる(顧省)
- 【省みる】自らを振り返る。反省する。
- 我が身を省みる。自らを省みて恥じるところがない。
- 【顧みる】過ぎ去ったことを思い返す。気にする。
- 半生を顧みる。家庭を顧みる余裕がない。結果を顧みない。
かえる(変換替代)
- 【代える】ある役割を別のものにさせる。
- 書面をもって挨拶に代える。投手を代える。余人をもって代え難い。
- 【変える】前と異なる状態になる。
- 形を変える。観点を変える。顔色を変える。
- 【換える】物と物を交換する。
- 物を金に換える。名義を書き換える。電車を乗り換える。
- 【替える】新しく別のものにする。
- 頭を切り替える。クラス替えをする。振り替え休日。図表を差し替える*。替え歌。
- *「差しかえる」「入れかえる」「組みかえる」などの「かえる」については、「新しく別のものにする」意で「替」を当てるが、別のものと「交換する」という視点から捉えて、「換」を当てることもある。
かえる(返帰)
- 【帰る】自分の家や元の場所に戻る。
- 故郷へ帰る。生きて帰る。帰らぬ人となる。帰り道。
- 【返る】元の持ち主や元の状態などに戻る。向きを逆にする。重ねて行う。
- 正気に返る。返り咲き。とんぼ返り。
かおり(香薫)
- 【薫り】主に比喩的あるいは抽象的なかおり。
- 文化の薫り。初夏の薫り。
- 【香り】鼻で感じられる良い匂い。
- 茶の香り。香水の香り。
かおる(香薫)
- 【薫る】主に比喩的あるいは抽象的なかおり。
- 菊薫る佳日。風薫る五月。
- 【香る】鼻で感じられる良い匂い。
- 菊が香る。梅の花が香る。
かかる(掛懸架係)
- 【係る】関係する。
- 本件に係る訴訟。名誉に係る重要な問題。係り結び。
- 【懸かる】宙に浮く。託す。
- 月が中天に懸かる。雲が懸かる。優勝が懸かった試合。
- 【掛かる】他に及ぶ。ぶら下げる。上から下に動く。上に置く。作用する。
- 迷惑が掛かる。疑いが掛かる。
- 【架かる】一方から他方へ差し渡す。
- 橋が架かる。ケーブルが架かる。
かく(書描)
- 【描く】絵や図に表す。
- 油絵を描く。ノートに地図を描く。漫画を描く。設計図を描く。眉を描く。
- 【書く】文字や文章を記す。
- 漢字を書く。楷書で氏名を書く。手紙を書く。小説を書く。日記を書く。
かける(掛懸架賭)
- 【懸ける】宙に浮く。託す。
- 懸(架)け橋*。賞金を懸ける。命を懸けて戦う。
- 【掛ける】他に及ぶ。ぶら下げる。上から下に動く。上に置く。作用する。
- 言葉を掛ける。看板を掛ける。壁掛け。お湯を掛ける。布団を掛ける。腰を掛ける。ブレーキを掛ける。保険を掛ける。
- 【架ける】一方から他方へ差し渡す。
- 鉄橋を架ける。電線を架ける。
- 【賭ける】賭け事をする。
- 大金を賭ける。賭けに勝つ。危険な賭け。
- *「かけ橋」は、本来、谷をまたいで「宙に浮く」ようにかけ渡した、つり橋のようなもので、「懸」を当てるが、「一方から他方へ差し渡す」という視点から捉えて、「架」を当てることも多い。
かげ(陰影)
- 【影】光が遮られてできる黒いもの。光。姿。
- 障子に影が映る。影も形もない。影が薄い。月影。影を潜める。島影が見える。
- 【陰】光の当たらない所。目の届かない所。
- 山の陰。木陰で休む。日陰に入る。陰で支える。陰の声。陰口を利く。
かた(形型)
- 【型】決まった形式。タイプ。
- 型にはまる。型破りな青年。大型の台風。2014年型の自動車。血液型。鋳型。
- 【形】目に見える形状。フォーム。
- ピラミッド形の建物。扇形の土地。跡形もない。柔道の形を習う。水泳の自由形。
かたい(堅固硬)
- 【固い】結び付きが強い。揺るがない。
- 団結が固い。固い友情。固い決意。固く信じる。頭が固い。
- 【堅い】中身が詰まっていて強い。確かである。
- 堅い材木。堅い守り。手堅い商売。合格は堅い。口が堅い。堅苦しい。
- 【硬い】(⇔軟らかい)。外力に強い。こわばっている。
- 硬い石。硬い殻を割る。硬い表現。表情が硬い。選手が緊張で硬くなっている。
かま(釜窯)
- 【窯】焼き物などを作る装置。
- 炭を焼く窯。窯元に話を聞く。登り窯。
- 【釜】炊飯などをするための器具。
- 鍋と釜。釜飯。電気釜。風呂釜。釜揚げうどん。
かわ(皮革)
- 【皮】動植物の表皮。本質を隠すもの。
- 虎の皮。木の皮。面の皮が厚い。化けの皮が剥がれる。
- 【革】加工した獣の皮。
- 革のバンド。革製品を買う。革靴。なめし革。革ジャンパー。革細工。
かわく(乾渇)
- 【乾く】水分がなくなる。
- 空気が乾く。干し物が乾く。乾いた土。舌の根の乾かぬうちに。
- 【渇く】喉に潤いがなくなる。強く求める。
- 喉が渇く。渇きを覚える。心の渇きを癒やす。親の愛情に渇く。
かわる(変換替代)
- 【代わる】ある役割を別のものにさせる。
- 父に代わって言う。身代わりになる。親代わり。
- 【変わる】前と異なる状態になる。
- 位置が変わる。気が変わる。心変わりする。声変わり。
- 【換わる】物と物を交換する。
- 現金に換わる。
- 【替わる】新しく別のものにする。
- 入れ替わる。日替わり定食。
きく(利効)
- 【利く】十分に働く。可能である。
- 左手が利く。目が利く。機転が利く。無理が利く。小回りが利く。
- 【効く】効果・効能が表れる。
- 薬が効く。宣伝が効く。効き目がある。
きく(聞聴)
- 【聞く】音が耳に入る。受け入れる。問う。嗅ぐ。
- 話し声を聞く。物音を聞いた。うわさを聞く。聞き流しにする。願いを聞く。親の言うことを聞く。転居した事情を聞く。駅までの道を聞く。香を聞く。
- 【聴く】身を入れて耳を傾けて聞く。
- 音楽を聴く。国民の声を聴く。恩師の最終講義を聴く。
きる(切斬)
- 【切る】刃物で断ち分ける。つながりを断つ。
- 野菜を切る。切り傷。期限を切る。電源を切る。縁を切る。電話を切る。
- 【斬る】刀で傷つける。鋭く批判する。
- 武士が敵を斬(切)り捨てる*。世相を斬る。
- *「武士が敵をきり捨てる」の「きり捨てる」については、「刀で傷つける」意で「斬」を当てるが、「刃物で断ち分ける」意で広く一般に使われる「切」を当てることもできる。
きわまる(窮極)
- 【極まる】限界・頂点・最上に至る。
- 不都合極まる言動。
- 【窮まる】行き詰まる。突き詰める。
- 進退窮まる。窮まりなき宇宙。
きわめる(窮極究)
- 【極める】限界・頂点・最上に至る。
- 栄華を極める。山頂を極める。極めて優秀な成績。見極める。
- 【究める】奥深いところに達する。
- 学を究(窮)める*。
- 【窮める】行き詰まる。突き詰める。
- 真理を窮(究)める*。
- *「突き詰める」意で用いる「窮」と、「奥深いところに達する」意で用いる「究」については、「突き詰めた結果、達した状態・状況」と「奥深いところに達した状態・状況」とがほぼ同義になることから、この意で用いる「窮」と「究」は、どちらを当てることもできる。
こう(請乞)
- 【乞う】そうするように強く願い求める。
- 乞う御期待。命乞いをする。雨乞いの儀式。慈悲を乞う。
- 【請う】そうするように相手に求める。
- 認可を請う。案内を請(乞)う*。紹介を請(乞)う*。
- *「案内をこう」「紹介をこう」などの「こう」は、「そうするように相手に求める」意で「請」を当てるが、相手に対して「そうするようにお願いする」という意味合いを強く出したい場合には、「乞」を当てることもできる。
こえる(越超)
- 【超える】ある基準・範囲・程度を上回る。
- 現代の技術水準を超える建築物。人間の能力を超える。想定を超える大きな災害。10万円を超える額。
- 【越える】ある場所・地点・時を過ぎて、その先に進む。
- 県境を越える。選手としてのピークを越える。困難を乗り越える。
こす(越超)
- 【超す】ある基準・範囲・程度を上回る。
- 1億人を超す人口。
- 【越す】ある場所・地点・時を過ぎて、その先に進む。
- 峠を越す。年を越す。度を越す。勝ち越す。
こたえる(答応)
- 【応える】応じる。報いる。
- 時代の要請に応える。期待に応える。声援に応える。恩顧に応える。
- 【答える】解答する。返事をする。
- 設問に答える。質問に対して的確に答える。名前を呼ばれて答える。
こむ(混込)
- 【混む】混雑する。
- 電車が混(込)む*。混(込)み合う店内*。人混(込)みを避ける*。
- 【込む】重なる。入り組む。
- 負けが込む。日程が込んでいる。仕事が立て込む。手の込んだ細工を施す。
- *「混雑する」意では、元々、多くの人や物が重なるように1か所に集まる様子から「込む」と書かれてきたが、現在は、「混雑」という語との関連から「混む」と書く方が一般的である。