異字同訓

このコンテンツは、間違いやすい「異字同訓」の使い分けの用例を示したものです。
※文化庁の『「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)』を参考にしています。

はえ(映栄)

え】光を受けて照り輝く。引き立って見える。
夕映え。
え】立派に感じられる。目立つ。
栄えある勝利。見事な出来栄え。見栄えがする。

はえる(映栄)

える】光を受けて照り輝く。引き立って見える。
紅葉が夕日に映える。紺のスーツに赤のネクタイが映える。
える】立派に感じられる。目立つ。
栄えない役回り。

はかる(図計測量謀諮)

る】あることが実現するように企てる。
合理化を図る。解決を図る。身の安全を図る。再起を図る。局面の打開を図る。便宜を図る。
る】長さ・高さ・深さ・広さ・程度を調べる。推測する。
距離を測る。標高を測る。身長を測る*。水深を測る。面積を測る。血圧を測る。温度を測る。運動能力を測る。測定器で測る。真意を測りかねる。
る】時間や数などを数える。考える。
時間を計る。計り知れない恩恵。タイミングを計る。頃合いを計って発言する。
る】ある問題について意見を聞く。
審議会に諮る。議案を委員会に諮る。役員会に諮って決める。
る】良くない事をたくらむ。
暗殺を謀る。悪事を謀る。会社の乗っ取りを謀る。競争相手の失脚を謀る。
る】重さ・容積を調べる。推量する。
重さを量る。体重を量る*。立体の体積を量る。容量を量る。心中を推し量る。
  • *「身長と体重をはかる」という場合の「はかる」は、「測定する」と言い換えられることなどから、「量る」よりも「測る」を用いる方が一般的である。

はじめ(初始)

め】ある期間の早い段階。最初。先の方のもの。
初めはこう思った。秋の初め。年の初め。初めて聞いた話。初めてお目に掛かる。初めての経験。初めからやり直す。初めの曲の方がいい。
め】開始する。始めたばかりの段階。物事の起こり。主たるもの。
懇親会が始まる。仕事を始める。書き始める。手始め。仕事始め。始めと終わり。国の始め。人類の始め。校長を始め、教職員一同……*。
  • *「校長をはじめ、教職員一同……」などという場合の「はじめ」については、多くの人や物の中で「主たるもの」の意で「始」を当てるが、現在の表記実態としては、仮名で書かれることも多い。

はな(花華)

】植物の花(特に桜の花)。花のように人目を引くもの。
花が咲く。花を生ける。花も実もない。花道を飾る。両手に花。花の都。花形。
】きらびやかで美しい様子。本質を成す最も重要な部分。
華やかに着飾る。華やかに笑う。華々しい生涯。国風文化の華。武士道の華。

はなす(離放)

す】拘束や固定を外す。放棄する。
鳥を放す。魚を川に放す。違法駐車を野放しにする。放し飼い。手放しで褒める。見放す。
す】距離や間隔が広がる。離脱する。
間を離す。ハンドルから手を離す。切り離す。

はなれる(離放)

れる】拘束や固定を外す。放棄する。
手放しで褒める。矢が弦を放れる。
れる】距離や間隔が広がる。離脱する。
駅から遠く離れた町。離れ島。離れ離れになる。戦列を離れる。職を離れる。

はやい(早速)

い】時期や時刻が前である。時間が短い。予定よりも前になる。
時期が早い。早く起きる。気が早い。早変わり。早口。矢継ぎ早。
い】スピードがある。速度が上がる。
流れが速い。投手の球が速い。テンポが速い。

はやまる(早速)

まる】時期や時刻が前である。時間が短い。予定よりも前になる。
早まった行動。順番が早まる。出発時間が早まる。
まる】スピードがある。速度が上がる。
改革のスピードが速まる。脈拍が速まる。

はやめる(早速)

める】時期や時刻が前である。時間が短い。予定よりも前になる。
開会の時刻を早める。
める】スピードがある。速度が上がる。
回転を速める。足を速める。

はる(張貼)

る】広がる。引き締まる。取り付ける。押し通す。
氷が張る。根が張る。策略を張り巡らす。気が張る。張りのある声。テントを張る。テニスのネットを張る。板張りの床。論陣を張る。強情を張る。片意地を張る。
る】のりなどで表面に付ける。
ポスターを貼る。切手を貼り付ける。貼り紙。貼り薬。壁にタイルを貼(張)る*。
  • *「タイルをはる」の「はる」については、「タイルをのりなどで表面に付ける」という意で「貼」を当てるが、「板張りの床」などと同様、「タイルを壁や床一面に取り付ける(敷き詰める)」意では、「張」を当てることが多い。

ひく(引弾)

く】近くに寄せる。線を描く。参照する。やめる。注意や関心などを向けさせる。
綱を引く。水道を引く。田に水を引く。引き金を引く。風邪を引く。けい線を引く。設計図を引く。辞書を引く。例を引く。身を引く。人目を引く。同情を引く。
く】弦楽器や鍵盤楽器を奏でる。
ピアノを弾く。バイオリンを弾く。ショパンの曲を弾く。ギターの弾き語り。弾き手。

ふえる(増殖)

える】(⇔減る・減らす)。数や量が多くなる。
人数が増える。体重が増える。出費が増える。
える*】財産や動植物が多くなる。
資産が殖える。ねずみが殖える。
  • *「利殖・繁殖」という語との関係を意識して「殖える・殖やす」と「殖」を当てるが、現在の表記実態としては、「利殖・繁殖」の意で用いる場合も「資産が増える」「家畜を増やす」など、「増」を用いることが多い。

ふく(吹噴)

く】空気が流れ動く。息を出す。表面に現れる。
そよ風が吹く。口笛を吹く。鯨が潮を吹(噴)く*。干し柿が粉を吹く。吹き出物。不満が吹(噴)き出す*。汗が吹(噴)き出る*。
く】気体や液体などが内部から外部へ勢いよく出る。
火山が煙を噴く。エンジンが火を噴く。石油が噴き出す。火山灰を噴き上げる。
  • *「鯨が潮をふく」は、鯨が呼気とともに海水を体外に出すところに視点を置いた場合は「吹」を、体内から体外に勢いよく出るところに視点を置いた場合は「噴」を当てる。
    また、「不満」や「汗」が「表面に現れる」とき、その現れ方の激しさに視点を置いた場合には「噴」を当てることもできる。

ふける(更老)

ける】深まる。
深々と夜が更ける。秋が更ける。夜更かしする。
ける】年を取る。
年の割には老けて見える。老け込む。この1、2年で急に老けた。

ふね(船舟)

】主に小型で簡単な作りのもの。
舟をこぐ。小舟。ささ舟。丸木舟。助け舟(船)を出す**。
*】比較的大型のもの。
船の甲板。船で帰国する。船旅。親船。船乗り。船賃。船荷。船会社。船出。船酔い。釣り船(舟)**。渡し船(舟)**。
  • *「船」は、「舟」と比べて、「比較的大型のもの」に対して用いるが、「船旅。船乗り。船賃。船会社。船出」など、「ふね」に関わる様々な語についても広く用いられる。
  • **「釣り船」「渡し船」は、動力を使わない小型の「ふね」の場合は、「釣り舟」「渡し舟」と表記することが多い。また、「助けぶね」は救助船の意で使う場合は「助け船」、比喩的に助けとなるものという意で使う場合は「助け舟」と表記することが多い。

ふやす(増殖)

やす】(⇔減る・減らす)。数や量が多くなる。
資本金を増やす。仲間を増やす。
やす*】財産や動植物が多くなる。
財産を殖やす。家畜を殖やす。株分けで殖やす。
  • *「利殖・繁殖」という語との関係を意識して「殖える・殖やす」と「殖」を当てるが、現在の表記実態としては、「利殖・繁殖」の意で用いる場合も「資産が増える」「家畜を増やす」など、「増」を用いることが多い。

ふるう(振震奮)

う】気力があふれる。
勇気を奮って立ち向かう。奮って御参加ください。奮い立つ。奮い起こす。
るう】盛んになる。勢いよく動かす。
士気が振るう。事業が振るわない。熱弁を振るう。権力を振るう。
う】小刻みに揺れ動く。
声を震わせる。決戦を前に武者震いする。思わず身震いする。

ほか(外他)

】それとは異なるもの。
他の仕事を探す。この他に用意するものはない。他の人にも尋ねる。
】ある範囲から出たところ。
思いの外うまく事が運んだ。想像の外の事件が起こる。もっての外。